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でもそんな『パパ』もまだ完全には『家族』というものには絶望していなかった。
そう、○○ちゃんのママという存在がいたからだ。
きっとママは○○ちゃんのことを可愛がって愛してくれてることだろう。
ママは『パパ』が出会った人間の中で一番善良で、最も愛した人だ。
だけど残念ながら、『パパ』の愛もママとの絆も『色々な運命』と他人の無関心、悪意によって終わりを迎えることになってしまった。
今更どちらが悪いなんて言う気は無いんだ。
ただ『パパ』は○○ちゃんが生まれたときには、お仕事の急激な変化によって忙しくなってしまった。
それは不思議なことに今迄の二倍働いても入ってくるお金は前よりもちょっとだけ少なくなってしまうという悪い魔法のような出来事なんだ。
そしてそんな状態でも他の人たちは知らん振りをしている。
『パパ』に命令する人達は『パパ』の倍のお金をもらっているのにその半分の仕事もしないというのにね……。
そんな生活の中で『パパの愛』も磨り減っていき、ママとの絆も削られていってしまった。
そしてある夏の日にママは○○ちゃんを連れてどこかへと消えてしまった。
もうあなたのことなんかどうでもいいのよ
そう言い残してね……。
勘違いしないでほしいのは別に『パパ』はママを恨んではいない。 むしろ今となっては感謝しているくらいなんだ。
『パパ』を『家族』というものに絶望させてくれたおかげで、『パパ』は色々なものから解放されることが出来た。
ある白人の青年が8Mile(マイル)の街角でmicを持って立ち上がることが出来たように、パパは薄暗いこの荒れ果てた8room(ルーム)の中でPCを立ち上げてこうやって小説を書き続けることが出来ている。
もう『パパ』はかつて熱烈に欲していた代物に魅力を感じなくなった。
そう、愛する人も子供も幸せな生活も今はもういらない。
今はただこの頭の中で紡がれる物語を書き写す以外にしたいことなんてないんだ。
たとえ明日死んだとしても(もちろん死にたくはないけれどね)その刹那の直前までも一字でも多く脳髄から湧き出るこのお話を残していきたい。
それだけが『パパ』が○○ちゃんの『パパ』になることを拒否するたった一つの理由だ。
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