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昼休みに保健室に来るようになった最初の頃は、一緒に昼食を食べてくれていた花保ちゃん。
ある日小さなお弁当箱を風呂敷に包んできて、“今日から一緒に食べてもいい?”なんて言ってきたんだ。
丸焦げの玉子焼きが入っていたり、白ご飯を詰めてくるのを忘れることもあった。
私のために不慣れなことをしなくていいと、1人で食べられることを伝えてからは、それまで通り、花保ちゃんは私と言葉を交わすと学食に昼食をとりに行く。
もうずっと、誰かと一緒に温かいご飯を食べることはない。
「……」
もくもく口を動かす。
冷めているからといって、コンビニのパンは負けず劣らず美味しいし、私がよく飲むコーヒーはあるし、たまにお菓子も貰えるし。
ちょっと、消毒の匂いが場違いなだけで。
ここで過ごすお昼の時間は、嫌いじゃない。
私が関わりを持つ数少ない人、花保ちゃんのことも嫌いじゃない――けど。
「教室で笑えないのは……」
ポツポツ、声に出して呟く。
「自分でも、この性格がしっくりくるって……思うようになったからかな……」
そよそよ揺らぐカーテンを見つめる。
窓に近づけば青い空が見えるのに、私は手元のパンに視線を落とす。
ここでよく飲んでいるコーヒー……本当は、ブラックコーヒーなんて苦くて美味しいと思わないのに。
無理をしてでもそれを飲む理由は、砂糖たっぷりの甘い味が今の自分には合わないと思うから。
――モクモク
「冷た……」
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