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「っ……」
思い出すと、喉の奥に何か引っ掛かっているような詰まりを感じて、すぐに頭の中を空っぽにする。
「あれさ、さすがにうちの校則でもアウトじゃない?」
男子生徒が壇上に現れてから、あちこちで女子が声を潜めて話をしていた。
「でも、超かっこいいよ」
「超は言い過ぎでしょ」
「それは好みの問題だもん」
校長先生が後ろに下がって、一言いいかい、と男子生徒を演台に誘導する声をマイクが拾う。
「はぁ」
転校生が演台に立つと、館内は静けさを取り戻した。
どんな声で、何を喋るのか、全校生徒が見守る。
私も真っ直ぐ、壇上の彼を見つめた。
「あー……と、なに喋ったらいいすか」
後ろの校長先生に質問する声は、マイクを通して館内に響く。
あぁ、私も同じようなことを聞いたっけ。
発作が起きて苦しいのに、一度顔を出すだけでいいからと、その時の担任に言われて壇上に立った。
“何を……話したら、いいですか……”
スピーカーから聞こえる自分の声は震えてて、泣きたくなったのを覚えてる。
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