02.

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「なんでも。一言でいいから話しなさい」 私に言ったように、校長先生の微笑む声がスピーカーから小さく聞こえた。 あの時は、優しそうなその微笑みが悪魔にしか見えなくて。 担任の先生は、顔を出すだけでいいって言ったのに、早く壇上から消えたくて―― だから、言ったんだ。 “一言なら……さっき喋りました” 「一言だったら、さっき喋りました」 「……ん?」 「ほら、『なに喋ったらいいですか』って」 私はパチ、と一度瞬きをして、目を見開く。 校長先生は、ハンカチで額を拭いながら苦笑する。 私の時と、同じ顔。 違うことといえば、体育館にたくさんの笑い声があること。 壇上から降りてくる男子生徒を目で追いながら、無意識に開いていた口を閉じる。 先生に誘導される彼は、上級生の列へと加わった。 ひとつ先輩の3年生の列はすぐ隣にあって、ここからよく見えた。 校長先生が舞台袖に消えて、今度は生活指導の先生の“お話”が始まると、ふと後ろから声が聞こえた。 「おい、透けてない?」 「何が」 声変わりが終わった声。 男子の列のクラスメイトが、ヒソヒソと話をしている。
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