02.

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「下着。キャミなんとかって、そんな名前のやつ」 「どこ」 「あっこ。透けてるだろ?」 「あ、マジだ」 「ちょっと、やめなってー」 後ろの方にいる女子も注意はするけど、声は笑ってる。 ここの夏服、ピラッピラだもんね。 「女子、教えてやれよ」 「言ってどうこう出来るもんじゃないじゃん」 そりゃそうだ。 心で呟いて、誰にも聞こえないため息を吐く。 蒸し暑さのせいもあるかもしれないけれど、体育館の中に全校生徒が集まっていると思うと窮屈に感じる。 視覚的にじゃなく、精神的に。 壇上に向けていた視線を前の人の背中に落として、静かに深呼吸をしようと鼻で息を吸った時。 ――トントン 「……」 軽く肩を叩かれて途中で息を止める私は、流し目で振り向くと、真後ろの女子が口元に手を添えて小さく手招きをしていた。 躊躇いながらも、私は少し後ろに下がって耳を寄せる。 ――ボソ 「キャミ、透けてるよ」 「え……」 喉の奥で、小さな声が出た。 あ……私? その瞬間、全身の血の気が引くのが分かった。
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