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またこれで、噂が広まる。
なんて……思われるだろ。
「退きなさい」
たくさんの上履きが見える。
床に倒れた私は尚も肩で息をして、掻きむしるように胸元の制服を握り締めた。
最近、学校では治まってたのに。
――ザワザワ
静かだった体育館も、人の声がうるさい。
原因は私。私が――。
「はい、退いて退いて」
頬に感じる、誰かが駆けてくる振動。
うっすら開けた目に、白い白衣が見えた。
花保ちゃんだ。
「紙袋は?」
目に涙を浮かべて、私はゆっくり首を振る。
「い……や……」
みんなが見てる。大袈裟だと思われる。
面倒だって、思われる。
「どうしよ……立てる? あー、立てないよね。田中先生っ、肩貸して下さい」
ガッシリした腕が私を担ぎ上げる。
周りを囲んでいた生徒が道を作ると、私の体は3年生の列の横を通って体育館の外に出された。
向けられていたたくさんの目から解放されて安心したのか、私は簡単に意識を手放した。
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