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「お、出てきた」
「うわ゛――」
――シャ
椅子に座っている転校生と対面して、咄嗟に間仕切りのカーテンを閉める。
で、出てってなかった――。
「なぁ」
「……」
「なぁって」
カーテンの裏で身を潜めていると、『内宮さん、相手してあげて』と、花保ちゃんの声がする。
「ヤです」
「そう。体調は良くなった? なら、教室に戻りなさいね」
――え。
勢いよくカーテンを開けて、机に向かっている花保ちゃんのシワ1つない白衣を見つめる。
「花保ちゃ……」
椅子を回転させてこっちを向く花保ちゃんは、目尻を垂らして優しい顔をしていた。
「なんて顔してるの。ごめんなさい、冗談よ」
「……」
「ほら、先輩と仲良くしてね」
「……はい」
やむを得ず間仕切りの中の安全地帯から出ると、転校生の傍までゆっくり歩み寄る。
ほんの少し、呼吸が速くなる。
花保ちゃんと椅子を並べて、机の隅っこで何かしている転校生。
息を潜めて恐る恐る肩越しに覗いてみると、サプリケースのような小さなプラスチック容器に、細かいビーズのようなものが入っていた。
その内の1つを指で摘んで眺めては、戻して。その度にカチャ、と音が鳴る。
ベッドの上で目を覚ました時、ぼんやり聞いていた音だ。
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