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  中学にあがると、周りの視線が変わった。 思春期真っ只中、私を物珍しい目で見る人達。 “お前、めんどくさい” メンドクサイ。 喉に引っかかった魚の小骨。 そんな風に、その程度のことだと処理出来ればよかった。 今もその一言が胸の底に刺さったまま、思い出そうものならまるで炎症を起こしたみたいに赤く腫れ上がって、じくじく痛む。 大好きだった男の子に、突然突き付けられた言葉。 あの瞬間、私はもう、人を好きになんてならないと思った。 本当に、心の底から思った。 幼い頃から幾度となく繰り返される親の転勤、変わる環境。 その生活には慣れていたけれど、私には、“ずっと友達”と言い合える子がいなかった。 最初は届く手紙もいつしか途絶え、顔を合わせることも出来ない人間なんて友達じゃないと、アドレスの変更の知らせは来ない。 小学校低学年までは、新しい学校で、新しい友達ともすんなり打ち解けられる自分はいた。 でも中学にあがった瞬間から、思春期に入った同年代の子たちの視線は、私を物珍しい目で見るようになった。 私も、上手く挨拶が出来ないようになって、輪に入っていけなくなって。 気付いたら――ひとりだった。
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