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いつまでこの生活が続くんだろうとぼんやり考えていると、案外すぐにその日はやってきた。
つい最近、転勤族から解放された私。
高校1年――夏の終わり。
「内宮 風花(フウカ)です」
「……ん? それだけか? これから同じ教室で過ごす仲間なんだから、皆にちゃんと挨拶しとけ?」
「……宜しくお願いします」
これが、最後の転校となった。
入学して、夏休みが終わって、仲良しグループもとっくに出来上がってしまっている教室に、ポツンと1人。
2学期から新しい学校、また新しい制服、とそれに腕を通す私の耳に届いた知らせ。
両親の死。交通事故だった。
こうして挨拶を交わす人間さえいなくなった私は、遠い親戚に援助してもらいながら新しい高校に通うことになった。
――あれから半年。
この春私は、高校2年生になった。
「出席とるぞー」
新しい1年のはじまり。
私の席は、廊下側の窓際にある。
うちの学校は校舎がコの字に建っていて、私の席からは向こうの校舎がよく見える。
生徒数が少なくて空き教室が目立つ校舎は、この教室の上、3階部分は全て立入禁止になっている。
教室を見回してクラスメイトの変わりない顔ぶれを確認すると、向かいにある3年生の校舎を眺めながら、この田舎じゃクラス替えも意味ないなと心の中で呟く。
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