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「せんせー」 「んー?」 「昨日、自己紹やってませーん。やらないんすか? そういや、先生のも聞いてない」 「おいおい、なに言ってるんだぁ? 俺は去年、お前らの数学受け持ってたんだぞ。知らない奴がいるってんなら手を挙げてみろー」 「じゃあ、俺達の自己紹介は」 「ハハッ」 先生が笑うと、唾でも飛んだのか『汚ねー』と、教卓の前にいる男子が楽しそうに顔を拭っている。 「クラス替えっていっても、お前らの学年は3クラスしかないんだぞ。1年間同じ階で勉強してたんだから、全員の好きな食べ物くらいは分かるだろ? 北川が遅刻魔だってことも、承知の事実だと思うがなぁ」 ドッと教室に笑いが起こる中、私はまた廊下の外を見た。 ……眠たい。 「先生、一緒にいて1年も経ってない子いますよ」 そんな言葉が聞こえて自分の教室に顔を戻すと、教卓の前の男子の隣に座っている女子が振り向いて、目が合う。 あっちとそっちで、クスクスと女子の笑い声が付いてくる。 「……」 只でさえ転校生というのは好奇の目で見られるんだ。 それに加えて私の性格ときたら……クラスメイトのネタになってしまうのも仕方ないのかもしれない。 私が教室で笑うことはないし、授業で当てられた時にしか喋らない。 それに――
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