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奥まで行くと、上履きを脱いで軋むベッドに上がる。
壁際にある枕を半分に折って頭を乗せれば、横になっても花保ちゃんの姿が見える丁度良い高さになる。
「跡が付いちゃうでしょ」
「花保ちゃんの観察」
大学を卒業してこの学校の保健室の先生になったという花保ちゃんは、それから5年も伸ばしていた髪を、旦那さんと喧嘩をしたという理由だけでバッサリ肩まで切ってしまった。
花保ちゃんがこっちを向くと、くりんと内巻きの髪が揺れる。
「お弁当は?」
「朝、コンビニで買ってきました」
手に持っている小さな袋を掲げる。
500mlの紙パックの紅茶と、ピザパン1つが入ってる。
「横になる前に食べなさい」
「はーい」
洗面台の下にあった丸椅子を出してベッドの側へと運ぶと、座って、紙パックにストローを挿す。
額に、先生の視線を感じる。
「……飲みますか?」
「あぁ、違うの。今日は、コーヒー入れないんだと思って」
保健室には、花保ちゃんが持ってきたコーヒーやお茶がある。
私もよく、飲ませてもらっていた。
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