第6話

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「アカネさん、行くとこないんです。 雇ってください」 「ーー・・・いいわよ。うちにいらっしゃい」 「ふふ、ありがとうございます」 ぼんやりと窓を見つめる。 大きな雨粒が窓に打ち付けられる。 パラパラ パラパラ あの日と同じ。 「……ルウヒ?なに見てるの?」 「……雨、好きなんです」 「え?」 「すべてを慈しみ育てる雨 あの人といっしょだ、から」 ポロリ 一粒落ちるともう止まらない。 喉元に込み上げてくるものを我慢できない。 喉の奥が焼けるように熱くなる。 好きなんです 好きなんです ただ、そばにいられればそれで良かったのに。 貴方に抱かれて。 この温もりを この唇を この手を この人を 独り占めしたいと望んでしまった。 望んではいけなかったのに。 私のものではないのに。 身代わりでも、それで満足しなきゃいけなかったのに。 どこまでも愚かな。
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