第7話

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「るーく?どうしたの?」 いつもそばで寝るだけなのに。 あんな風に起こしたの初めてだ。 「ワンッ」 ソファの後ろと私を見ては、ブンブンと尻尾を振り回す。 「??後ろ?」 合ってるかな。 何となく言いたいことはわかるんだけど…… 後ろを振り向く。 見覚えのあるスーツ。 少し隈のある顔。 ひどく驚いたその表情。 ……大好きな人。 「るう……」 「じ、うにぃ?」 なんで、いるの? うまく働かない頭で必死に思考を巡らせる。 テーブルの上には私の焼いたパウンドケーキ。 ーー・・・お客様って、慈雨にぃ? 「っ、るう」 立ち上がって、近付いてくる。 なんで、なんで るうは、慈雨にぃから離れないといけないのに。 「っ?!るう!!」 逃げなきゃ どこに? そんなこと分かんない 分かんないけど。 慈雨にぃのそばにいてはダメ 慈雨にぃに、笑顔でおめでとうなんてまだ言えない。 私の気持ちを伝えてしまう。 言っちゃいけない。 遠くへ 慈雨にぃから離れなくちゃ。
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