第7話

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「いてて……」 ……なんで なんで、助けるの? 抱き締めるの? なんで なんで 運転手さんと話をしているらしい。 抱き締められた体には振動が伝わってくるだけ。 何を言っているかは分からない。 逃げようともがいても 足掻いても この人は許してくれない。 ますます腕の力は強まるだけだ。 「るう」 やめてよ そんな声で呼ばないで 「なん、で、きちゃうですか?」 離れたい 逃げたい そばに来ないで 名前を呼ばないで 抱き締めないで ……でも本当は。 離れたい ーー・・・離れたくない 逃げたい ーー・・・逃げたくない そばに来ないで ーー・・・そばにいて 名前を呼ばないで ーー・・・名前を呼んで 抱き締めないで ーー・・・抱き締めて 好きで、好きで 分かっているのに、望みはないと分かっているのに。 どうすればいいのか分からない。 溢れ出す想いが涙となって 頬を伝っていく。
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