二人のハルと恵みの雨

2/63
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
残り雪に、朝晩の厳しい冷え込み。 蕾にはようやくほんのり赤みが差したものの、まだまだ開花には時が必要な桜の花。 グレー基調、所々に水色が覗く斑模様の空。 川幅が大きくて水量も多い、雄大な千曲川…否、こちらでは信濃川って言うんだっけ? そのほとりに私が今日から通う大学がある。 四月一日、長岡の街。 知らない土地、知らない人しかいない大学の入学式。 緊張していた私、 たまたま隣のパイプ椅子に座っていた男の子と目が合った。 彼はニコリと微笑み軽く会釈する。 私もそれにつられてニコリと微笑み、コクリと会釈。 少しだけ緊張がほぐれた。 「どうも初めまして、僕、津沢晴」 「私、井波春子」 「あ、偶然。君もハルなんだ」 彼は嬉しそうに話しかけてくる。 爽やかで、とても好印象。 「宜しく春子さん」 「こちらこそ晴くん」 私たちは少しだけお互いのことを紹介しあった。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!