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電話を手にとり、外線のボタンを押す。
その手は震えていた。
緊張からか。
鼓膜が震え、耳鳴りがする。
キーン・・・という高い音は、俺に対する最後の警戒音か?
しかしそれをやってのけらなくてはならない。
生きたいのなら。
事前に調べておいた番号。
何度も目で追い掛け、数字の羅列を頭で繰り返す。
続いて、相手が電話にでたら。
これも事前に考えておいた。
その台詞を口の中でもごもごと唱える。
できるだけそれっぽく。
高校時代の演劇部での経験がこんな形で活かされようとは、なんとも皮肉なことだ。
何度も何度も繰り返すと、言葉が耳鳴りに同調するように、自然と口に出るようになる。
ごくり。
生唾を飲み込むと、遂に例の番号をボタンに打ち込んだ。
もちろん、非通知設定をして。
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