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遥の足へと鈍い振動が届き、それは腰を通り抜け、静かに消えていく。
支えを失った男は短い悲鳴を残してゆっくりと地面へ倒れる。
「がっ、あ……」
どさり、と重々しい音だけ残して男は崩れ落ちる。
「な……に、しやがった」
男は苦痛に顔を歪めながらも下から睨み上げてくる。
遥はため息をつき、
「足に蹴りを一発放っただけだ。そんなことにも気が付かなかったか?」
「……ふざ、けるな!」
男は警棒のような棒を杖代わりに立ち上がるが既に足は震え、ただ歩く事すら儘ならなくなっていた。
「まだ解らないかのか? 今のは警告代わりだ。次は一撃で止めるつもりはない」
「――貴様」
「死にたくなければ……とっとと失せろ! 俺の気が変わらない内にな」
男はよろよろと歩き、ミニゲームの会場を出て行った。
遥は周囲を一瞥し、破損箇所がないことを確認し、ミニゲームの会場を後にする。
「あ、あの!」
遥は後ろから上がった少女の声に立ち止まり、振り返る。
「ありがとうございました!」
少女は頭を深々と下げ、お辞儀をする。
「俺は礼を言われる程の事はやっていない……ただ、仕事をしただけだ」
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