第2話

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そっと人指し指でその手をつつく。 すると。 『……わぁ』 小さい手が、ぎゅうっとその体に似合わないほど強い力で握りしめる。 美雨さんがしゃがんでくれたから、よく見えたその子の顔。 美雨さんと同じ。 髪の毛くりんくりんだ。 『かぁーいー』 『本当に。美雨に似て良かったわねるうちゃん』 『それって俺に対する嫌み?』 『それ以外に何があるよ』 大人たちの声なんか聴こえない。 ただ、このちっちゃい存在が可愛くてしょうがない。 『ぅー、だ』 『え?何?』 『ぅーぁ』 『??』 『うふふ。 慈雨君、涙姫嬉しいって』 『本当に?』 るうを見れば、すっごくにこにこしてて。 可愛い。 守ってあげなくちゃいけない。 何もわからない8歳の自分。 それでもその想いだけは強く、いつまでも残っていた。
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