651人が本棚に入れています
本棚に追加
そっと人指し指でその手をつつく。
すると。
『……わぁ』
小さい手が、ぎゅうっとその体に似合わないほど強い力で握りしめる。
美雨さんがしゃがんでくれたから、よく見えたその子の顔。
美雨さんと同じ。
髪の毛くりんくりんだ。
『かぁーいー』
『本当に。美雨に似て良かったわねるうちゃん』
『それって俺に対する嫌み?』
『それ以外に何があるよ』
大人たちの声なんか聴こえない。
ただ、このちっちゃい存在が可愛くてしょうがない。
『ぅー、だ』
『え?何?』
『ぅーぁ』
『??』
『うふふ。
慈雨君、涙姫嬉しいって』
『本当に?』
るうを見れば、すっごくにこにこしてて。
可愛い。
守ってあげなくちゃいけない。
何もわからない8歳の自分。
それでもその想いだけは強く、いつまでも残っていた。
最初のコメントを投稿しよう!