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見えてきた、この何てことは無い道。俺が8年前に死んでしまった場所だ。
あぁやっぱり……君は此処にまだ取り残されている。白いコートに身を包んだ、愛しい姿を見つけた。
今年の夏だった。
俺が前世の記憶を取り戻してしまったのは。
どんな運命なんだろう。
俺は何故か自分の前世の親友の家に生を受けた。
走ったよ、君の家に。
迷子になったと思われて、君は俺の両親に連絡してたけど。
そして送ってくれた。俺の昔の弟と一緒に、弟の車で。
だから知ってる。
君が弟と今付き合っている事。
きっと慰めあっていた内にそうなってしまったのだろうと思う。元々弟は君に好意を持っていた。自然な流れなんだろうと思った。
でもあれから8年、君はここから動けていない。
ごめんな。
あんな指輪をポケットに忍ばせたまま逝ってしまって。
君の時計を止めるのには充分過ぎる残酷なプレゼントになってしまった。
ずっと決めていた。冬になってこの日ここで君を見つけたら……。
スタスタと俺は躊躇せずに彼女の近くに寄っていった。彼女は俺に気がついて、目を瞠る。
「翔太くん!? どうしたの? こんな所で」
俺より背の高い雪奈は、かがんで俺に目線を合わせた。
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