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「お姉ちゃん何してるの? お兄さんと話してるの?」
「え? お姉ちゃんは1人だよ。それよりどうしてこんな所に……」
「……そこにいるよ、お兄ちゃん」
俺は誰もいない空間をゆっくりと指差した。
「な、何言って……」
苦笑いを浮かべながら指差した空間を見る。
馬鹿馬鹿しいけど、幼い俺がするとリアルだろ?
「見えないの? 背の高いお兄ちゃんの姿」
「翔太君、冗談言うとお姉ちゃん怒るよ?」
「本当だよ、お姉ちゃんに話しかけてるけど」
「……いい加減にして!」
思わず大きな声を出す雪奈。慌てて口を塞いでる。
大丈夫だよ、こんな事で泣きはしないよ。
子役顔負けの演技をしてやると俺は決めていたんだ、怯むかよ。
「指輪は捨てろって。時計も弟にあげろって言ってるよ」
雪奈の動きが止まった。そりゃそうだよな。
指輪も時計も保護してくれた時に偶然部屋で見た。形見に違いない。あの時計は自分へのご褒美に自分で買ったんだ。見間違わないよ。
でも『翔太くん』が知ってるはずは無いよな。
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