魔法少女、出勤しました

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「……と、本来であれば、地球に迫る危機を団結して防ぐはずだった僕達なんだけど、管理者である科学者達が争いの果てに死んでしまってね……今は僕達、リンクドールだけで派閥を作り、各々の目的の為に戦ってるという訳さ……全く、“ミラクルモンスター”だけでも厄介なのに、敵対する魔法少女とも戦わなくちゃダメなんて……参っちゃうよ、ホント」  世の中には、サービス残業という物が存在する。私からすれば意味不明なんだけど、兎に角存在するのだ。新しい仕事を覚える為にーとか、ちょっーと仕事が思う通りに進まなかったとか、上司の機嫌を取りたいからーとか、無理難題の末……等々、その発生理由は様々である。 「あぁ、因みにミラクルモンスターってのが、僕達の戦うべき本来の敵。科学者が予測した、地球に迫る危機の体現であってー……」  しかもこの日本には、ノミニケーションってのも存在する。親睦を深める為に、好きでもない職場の連中とお酒を飲む……しかも実費で。全く、意味が分からない。これも立派なサービス残業だと、私は思う。 「……って、ユッキー聴いてる?」 「アー、ウン。キイテルキイテルー」  何故普通の女子高生である私、七原雪がそんな事を考えてるかと言いますと……。 「そう、なら良いけど……あ、それで魔法少女の話なんだけどね……」  昨日、私は魔法少女にジョブチェンジした。この、目の前で“魚チューハイ”なる物―500ml缶タイプ―をグビグビと飲む、コガタペンギンのダニエルが提示した条件が良かったからだ。 「察しの通り、魔法少女は君を含めて十二人存在するんだ……各々が特殊な魔法を持っていて、一応、序列ってのが存在する……科学者達が死ぬ前に割り出したデータで、古くて正確では無いから……強さの基準程度に考えてくれれば良いよ」  幾らあってもお金が足りない女子高生にしてみれば、時給一万二千円なんてのは笑顔で股を開いちゃうくらいの好条件だ。実際私の友達なんかは、三万円で脂っぽいオジ様と朝までフルコースしたらしい。その後直ぐに、誰の子か分からない赤ちゃんを妊娠して学校やめちゃったけど……凄く可愛くて、性格良い子だったのになぁ……。
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