魔法少女、出勤しました

4/23
前へ
/134ページ
次へ
「例を上げて話すと、昨日倒した魔闘少女ヘルフラワー……狐のテン=パーランスが合体して出来た魔法少女。完全変化魔法の“傾向の美女(レインボービューティ)”と、その手で触れた相手の魔力を吸収する魔法“精魂吸引(バキュームハンド)”を持っている……当時の序列は五位。暗殺や奇襲に特化した、正に魔闘少女さ……テンと対峙した僕が、こうして生きて酒を飲めるのが不思議な位だよ。それだけ、序列五位ってのは凄まじい物だと理解して欲しい……今日のは、ラッキーパンチが当たったに過ぎない……だから油断は禁物だよ、ユッキー!」  取れかけてたはずの片翼と熱弁をブンブン振るい、ケフゥ、と可愛らしいゲップを吐くダニエル。私のお母さんが確りと縫った甲斐もあり、後遺症も見られない。それが尚更、私の気を重くした……。 『元気すぎんだろコイツゥ……!? てかマジで、何時まで喋るつもりなのよ……!? いい加減態度で察しろって、眠いんだっつーのコッチはぁ!?』  なんて風に燃え上がる内なる怒りを、口に出して叫ぶ元気は今の私には無い。誤魔化し程度に飲むリンゴジュースは、とっくの昔に味がしなかった。  確かに、私の自業自得だ。妊娠してしまったあの子と一緒。高時給と、終わったら願いを叶えるっていう夢見たいな話に釣られた私が悪い、悪いのだが……。 『……でも、だからってこの仕打ちは酷い。酷すぎる!』  カラオケが終わるなり私の自室に乗り込んで、何処からか持ってきた変なお酒を飲みながら、徹夜で意味不明な説明を何十回も聞かせるなんて……! こんなの契約に無かった! うわぁああんっ、雪ちゃんの玉のお肌にヒビが入っちゃうよぉお!? 「あ、ユッキーってばやっぱり聞いてないでしょ!? もぅ、また始めから話直し……ゲフゥ!」 「くさッ、くっさぁ!? ゲフ吐きかけんな! 超生臭いんだって!」  しかも、魚チューハイの影響か、ダニエルの吐き出す呼気は異常に生臭い。これが、私の眠れない最大の要因だ。落ちかけても、強烈な刺激臭で目が覚めてしまうのである。 「えー……何処まで話したっけ……」 「もうやだぁ! この酔っ払いペンギン相手すんのぉ……!」  思わず叫んで机に突っ伏した私。横目で確認した犬さん時計曰く、只今の時刻はAM4:44だそう。私の夜明けは、何時来るのだろうか……?
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加