魔法少女、出勤しました

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「テンを倒したって言えば、皆僕を見直してくれるかも……特にスカーレットなんて、ビックリして飛び上がるんじゃないかなぁ……んふふー、早く会いたいなぁ」  プシッと音を立て、新しい魚チューハイを開けたダニエルは、嬉しそうに目を細めて缶を傾ける。スカーレット、酔い始めから何度も名前が出る所を見るに、ダニエルはスカーレットなる烏に惚れている……しかも、内に秘める熱烈な片思い。猛烈な眠さから来る意地悪心が、私に口を開かせた。 「……ダニエル、あんたさ、スカーレットってのと付き合ってるの?」 「ブゥーッ!?」  因果応報、ここに極まれり。私の発言に過剰反応を示したダニエルが、派手に魚チューハイを吹き出した。超生臭い物を顔にぶっかけられるという、普段の私なら金銭と命を要求するレベルのプレイを強要される。 「なななっ、何を言い出すんだよユッキー! 僕とスカーレットが床を共にするような濃密な関係だなんて!」 「……言ってねぇし」  だが、これも自業自得だ。寛大な心を持つ雪ちゃんは、逆ギレなんかしない。というか、そんな元気無いわ……。 「た、確かにスカーレットは魅力溢れる女の子だよ……とても強くてカッコいいし……毒舌だけど、本当は優しいし……容姿もそうだけど、中身も……! あぁ、スカーレット! 可愛いよスカーレットォ! スカーレットと合体したいよぉー!」  魚チューハイをイッキ飲みして、唐突に私のぬいぐるみ―ペンギン―に抱き着き、妄想興奮共に最高潮といった様子のダニエルを放置し、私はのそりと立ち上がる。 「……お風呂入ってくる……」 「えっ、良いの!? やったぁ! 幸せな家庭を作ろうね、スカーレット! 子供は何羽くらい欲しい!? むちゅー!」 「……明日って、燃やせるゴミの収集日だったっけ……?」  二体のぬいぐるみの廃棄処分を何となく決めつつ、ヤバい目でぬいぐるみにキスをするダニエルを横目に、私は部屋を出た……。
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