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ワニ革の、露出過多な攻撃的衣服。その頭を覆う、鰐の頭を模した帽子。四肢の先端は固そうな小手と具足で覆われ、古代から生きる凶悪な生物の牙が付いている。話に聞いていた、ワニのアンナと合体した魔法少女に違いない。
『いきなり攻撃してくるなんて……コイツ、ダニエルの仲間じゃなかったの!? ていうか、何で血塗れ!?』
そう、目の前の魔法少女は、明らかな手負いだった。良く見れば、露出した肌だけでなく、固そうな衣服の表面まで傷だらけ。その至る所に、赤黒い液体と半個体が付着している……。
「……さ、最後の……噛砕、竜巻拳……ごめ、んねっ、アンナっ……今ので、私の何かが……切れ……」
ワニの魔法少女は、虚空に向かってそう呟くと、盛大に全身から血を吹き出してバッタリと倒れた。近くにいた私は、その多大な被害を被る。漏れ無く全身ワニの血塗れだ。
「うぎゃあああ!? キッ、タネェ!? 折角シャワー浴びたのにぃ! ぺぺっ、しかも口にまで入ったし! 今日の雪ちゃん、ぶっかけサービスデーか何かなの!?」
本日二回目の盛大なぶっかけ―しかも今回は血液―に憤慨する私の目に、発光するワニの魔法少女が映る。
「えっ!? ちょっと、ここで爆発四散とかしないでよ!? 現状既に、親や警察になんて説明しようか困っちゃうレベルなのに!」
思わず叫ぶ私の前で、一際光る魔法少女。強い光は粒子となり、名残惜しげに魔法少女から離れていく。軈て粒子は一つの塊として、その輪郭を現した。
「わ、ワニ……?」
粒子は結合し、ワニのぬいぐるみとして顕現する。横で事切れた魔法少女は、既に白いセーラー服姿の少女へと戻っていた……。その姿は、つい先程思い出したかつての友人である……。
「まっ、舞ちゃん……!?」
思わず飛び付いた私は、その身体を抱え上げる。黒髪のポニーテール、切れ長な目、そして安らかな笑顔……当時と全く変わらぬ、舞ちゃんの姿がそこにあった。
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