49人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ふふっ、どうやらここまでね……後を、頼むわよ……あぁ、最後だから、勇気を振り絞って、言うけど……ダニー、実は私、貴方の事、本気で食べたかっ……た……」
アンナの目から、滴が溢れ落ちる。それを最後にアンナの、そして舞ちゃんの身体は光の粒になって消えた……。
「ちょっ、こんなタイミングで消えないでよ!? 私になんかに託されても困るわよ! てか、食べたかったってどっちの意味よ馬鹿ー!」
血塗れで、滅茶苦茶になった玄関で一人、俯いた私の頬を滴が伝った……。
「せめて、玄関の修理代くらい置いてきなさいよ……!」
――――――
「……ユッキー、ほら、ユッキー起きて!」
揺さぶられる感触に、私は微睡みの中から緩慢に抜け出した。
「うぅん……誰よぉ……?」
目を擦り、ボヤける視界を整える。ピントがあったその目が捉えたのは、ドアップのコガタペンギン……ダニエルの顔だ。近いって。
「えい」
「ふぎゃあ!?」
どうにも寝覚めが悪かった私は、寝惚けるままにダニエルの顔を鷲掴みして、そのまま指を食い込ませる。言わずと知れた、アイアンクロー。そしてそのまま……。
「食らえー、噛砕竜巻投(デスローリング)ー」
「おぉおお!?」
捻りを加えて、壁目掛けてぶん投げた。ジャイロ回転して飛ぶダニエルは、そのままモフッと壁に激突する。
「い、今のは確か……そうだ、形は違えどアンナの魔法だ! ユッキー、何処でそれを!?」
ズルリと壁を伝い、頭から床に落ちたダニエルの言葉に、私は強烈な頭痛を覚えた。
「痛ッ……あー、いや、何となく頭に浮かんだから言っただけ……」
「そ、そう……」
見回すと、そこは何時もと変わらぬ自室のベッドの上。今朝のアレは、夢だったのだろうか……?
「……アレって、何だっけ?」
「知らないよ……あ! ユッキー、早速だけど出勤だよ!? 町中にミラクルモンスターの反応が現れたんだ! 調査に行こう!」
物凄い勢いで近付き、再び零距離で喋るダニエル。だから近いんだって。
「眠いからパス……」
「なんて怠慢な魔法少女……」
「噛砕竜巻投ー」
「のわぁああ!?」
「……分かったわよ、面倒だなぁもう……」
再びダニエルを壁に叩き付け、私は大あくび。時刻はAM8:40。伸びをしてベッドを抜ける頃には、頭痛も疑問もすっかりスッキリ消えていた。
最初のコメントを投稿しよう!