魔法少女、出勤しました

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「……ふふっ、どうやらここまでね……後を、頼むわよ……あぁ、最後だから、勇気を振り絞って、言うけど……ダニー、実は私、貴方の事、本気で食べたかっ……た……」  アンナの目から、滴が溢れ落ちる。それを最後にアンナの、そして舞ちゃんの身体は光の粒になって消えた……。 「ちょっ、こんなタイミングで消えないでよ!? 私になんかに託されても困るわよ! てか、食べたかったってどっちの意味よ馬鹿ー!」  血塗れで、滅茶苦茶になった玄関で一人、俯いた私の頬を滴が伝った……。 「せめて、玄関の修理代くらい置いてきなさいよ……!」 ―――――― 「……ユッキー、ほら、ユッキー起きて!」  揺さぶられる感触に、私は微睡みの中から緩慢に抜け出した。 「うぅん……誰よぉ……?」  目を擦り、ボヤける視界を整える。ピントがあったその目が捉えたのは、ドアップのコガタペンギン……ダニエルの顔だ。近いって。 「えい」 「ふぎゃあ!?」  どうにも寝覚めが悪かった私は、寝惚けるままにダニエルの顔を鷲掴みして、そのまま指を食い込ませる。言わずと知れた、アイアンクロー。そしてそのまま……。 「食らえー、噛砕竜巻投(デスローリング)ー」 「おぉおお!?」  捻りを加えて、壁目掛けてぶん投げた。ジャイロ回転して飛ぶダニエルは、そのままモフッと壁に激突する。 「い、今のは確か……そうだ、形は違えどアンナの魔法だ! ユッキー、何処でそれを!?」  ズルリと壁を伝い、頭から床に落ちたダニエルの言葉に、私は強烈な頭痛を覚えた。 「痛ッ……あー、いや、何となく頭に浮かんだから言っただけ……」 「そ、そう……」  見回すと、そこは何時もと変わらぬ自室のベッドの上。今朝のアレは、夢だったのだろうか……? 「……アレって、何だっけ?」 「知らないよ……あ! ユッキー、早速だけど出勤だよ!? 町中にミラクルモンスターの反応が現れたんだ! 調査に行こう!」  物凄い勢いで近付き、再び零距離で喋るダニエル。だから近いんだって。 「眠いからパス……」 「なんて怠慢な魔法少女……」 「噛砕竜巻投ー」 「のわぁああ!?」 「……分かったわよ、面倒だなぁもう……」  再びダニエルを壁に叩き付け、私は大あくび。時刻はAM8:40。伸びをしてベッドを抜ける頃には、頭痛も疑問もすっかりスッキリ消えていた。
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