魔法少女、出勤しました

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 腹が減っては戦は出来ぬ、とはよく言ったものだ。手早く着替えて自室を出た私は、ダニエルと共に居間へ。出勤前の腹拵えだ! 「おかわりもあるから、いっぱい食べなさーい」 「「はーい」」  お母さんが用意した和定食―真っ白ご飯、鮭の塩焼、じゃがいもの煮付け、根菜の漬物、そしてワカメの味噌汁―に、私達は合掌からコンマ三秒で飛び付いた。 「「いただきます……ッ!」」  ガツガツムシャムシャ、二人の戦士が織り成す無言の戦闘的ロックミュージックに、お母さんはクスクスと笑っている。 「今日は良く食べるわね、雪。ダニエルちゃんのお陰かしら?」 「ん……あー、そうかも」  私は手を止め、お母さんの台詞にふと考える。確かに、普段の私は朝食拒否も有り得る位に少食だ。でも、何故か今日はいやにお腹が減っている。これも魔法少女になった影響かな、なんてお母さんには言えないけど。 「冬美(ふゆみ)さん! これ、凄く美味しいです! 美人な上に料理上手なんですね! 旦那さんに嫉妬しちゃうよ!」 「まぁ、ダニエルちゃんたら! お上手なんだから、もうっ!」  目を輝かせて誉め称えるダニエルを、お母さんはくねくねしながら頭を叩く。うん、間違っても言えない。この人はちょっと、いや、かなり一般水準からズレた神経回路を持ってるから……。 『天然と言えばそれまでだけど……アホだよなぁ、お母さん……ま、だからこそダニエルの手術が出来たんだろうけど……』  ダニエルとお母さんがお喋りするのを横目に、私は食事を再開……。 「あぁ、そうだ二人とも。今日は外、スノーマンが降ってるから温かい格好して出掛けてね?」 「は?」  ……したはずのその手を、お母さんの台詞が止めた。え、今、夏ですよ? ていうか、スノーマンって何? 雪だるま降ってるの?
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