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「……もしかして」
呆ける私と対象的に、ダニエルは真剣な表情を作って倍速で朝食を片付ける。
「冬美さん、ごちそうさま!」
如何にも慌ててるといった様子で、シュババっと食器を片付けたダニエルは居間を飛び出した。
「あらら、ダニエルちゃんたら……ペンギンさんだし、やっぱり雪が降るとはしゃいじゃうのかしらね?」
「あー、そうかもねー……ごちそうさまー!」
うふふと笑うお母さんを横目に、私も倍速で食事を片付けてダニエルを追う。幸いにも、ダニエルは玄関扉の前で止まっていた。
「ダニエル!」
「あ、ユッキー……」
近寄りながら声を掛けると、心なしかしっとりしたダニエルが放心した様子で振り返る。先程の勢いはどうしたのか。
「……ミラクルモンスターだかの仕業なんでしょ……? 早く行かないと」
「それは、うん……そうなんだけど……」
何やら歯切れの悪いダニエルに首を傾げつつ、私は扉のノブに手を掛けた。
『あれ……?』
何か心に引っ掛かりを覚えた私は、その原因を探る為に思いを巡らすも、何一つ思い当たらない。
『……気の、せいか……』
深い思案から抜け出し、私が扉を押し開こうとしたその瞬間、ダニエルの制止が響く。
「あ、ユッキー! まだ開けちゃ駄目だ!」
「えっ……?」
だが、動き始めた身体の勢いは止まるはずもなく……扉は押し開かれた。
「……へっ?」
瞬間的に吹き込む極寒の風……開け放たれた扉の外には、別世界が広がっている。私の目が正しければ、私の町は“雪原”と化していた。そして、驚く私に追い討ちを掛けるように空から落ちてきた二メートル程ある雪だるま……。ボスンと音を立て、目と鼻の先に着地したスノーマンはミシミシと頭を回転させ、凶悪な表情をこちらに向ける。私は、持てる力を全て発揮して、寒さで固まりつつあった扉を閉めた。
「……何、今の」
「中型の“デビル・スノーマン”だよ……だから開けちゃ駄目って言ったのに……」
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