魔法少女、出勤しました

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 怒りを込めた黒塗りの双剣が、デビル・スノーマンの顔面を捉える正にその瞬間! 「ふぁいあー☆」  気の抜ける掛け声と共に、デビル・スノーマンの顔面は目の前で爆発! 溢れ出たエネルギーの奔流と肉片は、飛び掛かった私に迫る。 「あぶい!?」  咄嗟に双剣を交差させ、防御の構えを取る。しかし、その勢いは凄まじく、私の身体は軽々と吹き飛ばされ、廊下の終わり―居間の扉―に叩き付けられた。 『ユッキー、大丈夫!?』 「だ、大丈夫な訳ないでしょ……!? うげぇ、きったねぇ……全身ドロドロべっちょべちょ……本日のぶっかけサービス終了のお知らせだよ、もうっ……」  おぞましい色の肉片と粘液まみれになった私の視界に、闇色の人影が映る。 「もー、私は人妻なんですからね? ねちょねちょ触手プレイなんてもうお断りよ? あ、でも、人妻って需要あるのよねぇ……うーん、背徳感」  星付きステッキの先端から出す火炎放射で、丁寧にスノーマンの残骸を焼き払うお母さん。私と違い、その身体は綺麗なものだ。 「お、お母さん……やっぱり魔女だったんだ……」 「あらー、雪ったらべちょべちょのドロッドロ、とっても可愛いわー! うーん、これなら私もべちょった方が良かったかしら……皆で食べよう親子丼的な……うーん、需要ある絵面よね」  何やらブツブツ、頬を赤らめながら呟くお母さんは、一通り残骸を焼き払うと私の元へ歩み寄る。 「記念写真撮ってもいいかしら?」 「何記念なのさ……」 「タイトル、立ち合い・娘の初夜」 「どんだけ歪んだ家庭なのよ! てか、カメラ用意すんな!」 「えー? もう、雪ったら恥ずかしがり屋さんね……」  何処からか取り出した一眼レフをその辺にポイッと捨てた母は、至極残念そうに星付きステッキを振った。 「ばっちい物全部、消えてなくなーれっと」  やる気のない呪文と共に炎が舞い、私に張り付いていた汚物を残らず気化させた。その、不快感までも……。凄いな、リアル魔女。
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