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「ふはははははっ! 惰弱脆弱貧弱なり! お前一人で私に挑んだ勇気は買ってやる! だがしかしっ、圧倒的実力不足!!!」
氷で出来たピラミッドに叩き付けられてめり込んだ私は、全身に走る痛みの中でその声を聞く。
「またあの烏(おんな)が助けに来るのか? みっともない醜態を晒して、またあの烏の庇護を受けるのか? 男を見せてみな、ペンギン!!!」
『くそっ、僕は……やっぱり何も出来ないのか……!?』
くっそー……あンの白熊、ダニエルをバカにし腐りやがってぇ……! 沸き上がる闘志が痛みを消し去り、私を立ち上がらせた。
「ほぉ! ベアパンチの直撃を受けてまだ立つか! ふははは! ペンギン、今回も良い娘を選んだようだな!」
『ユッキー!?』
「ダニエルを馬鹿にするって事はっ……私を、馬鹿にするって事よ!?」
剣の一つの切っ先を白熊に向け、私は高らかに叫ぶ。
「最近の女子高生怒らせたらどうなるか、身を持って思い知らせてやるよ白熊!!!」
「良いぞ良いぞ良いぞぉ!? そうこなくては食う価値が無いと言うもの! お前の肉は、あの小娘より甘美かも知れん!」
そう言うと、白熊はゆっくりと立ち上がった。途端、殺気が今までの三倍に膨れ上がる。身体の大きさは、さらにその倍以上に感じられた。恐怖が無いと言えば嘘になる。しかし、引くわけには行かない。
「行くわよ、ダニエル!」
『でも、ユッキー……全力の滑走穿孔剣すら止められたんだよ……!? 絶対氷壁を溶かせるスカーレットも居ない今、僕達に勝ち目は……』
「仇を討つんでしょ!? ダニエルの気持ちはその程度なの!? だとしたら、ガッカリした!」
『なっ!?』
ダニエルの言葉を待たず、剣を構えた私はスノー・クイーン目掛けて飛び掛かる。
「うりゃあああ!!!」
放つ斬撃は、当然の如く絶対氷壁に阻まれた。
「ははははははっ! 一丁前なのは口だけか!?」
哄笑(こうしょう)を上げ、その太い腕を振りかぶるスノー・クイーン。しかし、私は尚も斬撃を繰り返し、氷壁を削る。
「さっきのは、あんた一人の力! だけど、私達の力を合わせれば、きっと壁を越えられる! 違う!?」
「囀りはもう、聞き飽きたわ! ベアァァ……パァアアンチッ!!!」
叫ぶ私に、一撃必殺の威力を感じさせる拳が遂に放たれた……!
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