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「……粗茶ですが」
「「……どうも」」
そんなわけで……騒ぎを聞きて駆け付けたお母さんに壁を直して貰い、一人と一頭を正座させて今に至る。用意した飲み物―正確には、覗き魔一人と一頭を私の友達だと思ったお母さんが、勝手に持ってきたお茶―を目の前に置き、卓を挟んで向かい側、複雑な表情を浮かべるダニエルの横にどかりと腰を下ろす。
「……で、何がどうしてこうなったか話して貰えるかな?」
小さな卓で頬杖を突きながら茶を啜るという、自分でもだらしないと思える体勢でぞんざいに言葉を吐く。コイツらのせいで充足感も、ダニエルの好感度アップイベントも、そして朝一再合体イベント―正直、あるかは微妙だったが―まで纏めて吹き飛ばされたのだ。この怨み、態度に出さずにいられようか。
「……ならば小生が語ろう、この運命に繋がる序曲を」
「いや、出来ればヨシフは黙っててくれると嬉しいな。君が説明すると、話がややこしくなるからさ」
ダニエルは苦笑いを浮かべながら、名乗りを上げたヨシフを制する。するとヨシフは、そうか、と短く呟くと、悲しそうに押し黙った。
『まぁ、どっちでもややこしくなりそうだけどね……』
『ん? どういう事?』
直接感応によって紡がれた私の言葉に、ダニエルは不思議そうな目で此方を見詰めた。そう……寝ていたダニエルは知らない。気を利かせ、一見まともそうな少女に任せたのだろうが……それは間違いだ。
「……あの、その前に一つ……質問が……」
そんな話題の当人がおずおずと、そして何故か、もじもじしながら手を上げた。
「何よ」
「あの、その……このお茶って……媚薬入ってるんですよね……? く、薬で蕩けたあたしという汚れ無き果実を、七原さんが食べ……」
「入ってねーし! そして食べもしねーよ!? 病院行け病院! なんだったら紹介してやっから!」
何故ならこの子は、紛れもない真性の変態なのだから……。
『あっちゃー……』
『……だから言ったでしょ?』
言っておくが、何も初見でそう確信して言ってる訳じゃない。私は分別のあるビッチなのだ。そう確信するだけの理由が、実はある。
「はぁ……貴女、本郷 珠枝(ほんごう たまえ)さん、だよね……私と同じクラスの。休みがちで、あまり絡みもないから思い出すのに時間掛かったけど」
「!!?」
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