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きっと本郷さんは混乱してるんだ……自分の中に、知らない何かが入ってくる感じに。でも、私が同じだって分かれば、きっと納得してくれるはず。アレだけ自分から舌絡めて来たんだし……。
「ううっ、だとしてもこれは酷すぎます……あたしの、ファーストキスは……無慈悲で不潔な強姦魔に乱暴に奪われ、思い出したくもない最悪の味になるはずだったのに……! こんな、何度も思い出してしまうような甘いキスをするなんて、七原さんは最低です!!!」
「どんだけ歪んだ性癖してんだよお前!? 私の感傷を返せ、このクソ女!!!」
ダメだこの子、マジで救えない変態だ。あー、何か色々損した気分。大袈裟にため息を吐くと、本郷さんはクスリと笑って私に抱き着いた。
「……え、何?」
「だから、責任取ってください……“お姉様”」
そう言うと、彼女は私を押し倒して唇に飛び付く。先程同様ぎこちないが、確かな熱意と愛が動く舌越しに流れ込んできた。
『ヤバッ、何か、変だ……まさか私、嵌められた……!?』
最初から警戒しておくべきであった……登場のインパクトが凄すぎて失念していたが、この子も“魔法少女”なのだ。幾らダニエルと馴染みのリンクドールを相棒にしているとはいえ、それが味方とは限らない。どんな手で私を攻撃してくるか、分かったものではないのだ。現に頭がボーッとして、上手くダニエルとの直接感応が出来ない。……助けて……ダニエル!
「滑走突撃(トボガン・アタック)!」
「ひゃうっ!?」
助けを求めようと思った正にその時、直接感応の会話も無しにダニエルが飛び込んできた。脇腹にめり込んだその嘴に、本郷さんは小さな悲鳴を上げ、背を反らせる。
「い、まだっ!」
結合した唇が離れたその一瞬の隙を突き、私は本郷さんを突き飛ばす。予想異常に軽いその身体は、容易く私の身体から離れて床に転がった。
「うふ、ふ、いったぁーい……激しいですお姉様……優しいだけじゃ、ないんですね……?」
「はぁ、はぁ……あんたのお姉様になったつもりは、無いんだけど……?」
妙な脱力感に見舞われる私を庇う様に前へ出たダニエルが、その丸っこい片翼を突き出し、本郷さんへと高らかに問い掛ける。
「僕の命が有る限り、雪に手出しはさせないぞ!? 貴様の目的はなんだ! 誰の差し金だ、答えろ!」
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