魔法少女、始めました

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『くっ、やはり気付いていたのか……!? これは、マズイぞ……!』  私と違い、震えながらも何処か冷静な声。私の頭を華麗に飛び越えて膝上に着地したペンギンは、両翼を広げて私を守るように立つ。私を守る……この子はそう言っていたが、きっとそれは扉の向こうにいる驚異から守るという意味だったのだろう。ちょっとカッコいいぞ、コガタペンギン……あ、ヤバい。ちょっと下腹部がキュンとした。これが、噂に聞く“つり橋効果”ってやつか! ペンギンの子供って、人間の私でも生めちゃうのかなぁ!? 雪ちゃんドキドキ! 『……このままじゃ、僕ら一人と一羽は殺られてしまう……それこそ、赤子の手を捻る位簡単に……!』  背中越しでも分かるくらいキリリと引き締まった表情で、コガタペンギンは私に言った。 『説明してる時間は無い……まだ名の知れぬ君! 僕と合体して、魔法少女になろう!』 「やっぱり身体目的かぁああ!!!」 「えぇええ!? ちょっと待って! 今の展開でそう捉えられるとか君、どんだけ歪んでるの!?」 「つり橋効果なんて所詮幻なんだよ自演乙ペンギン! 共犯者諸共死ねぇええ!!!」  興奮に次ぐ興奮で、恐怖が裏返って怒りに変換された私はペンギンを鷲掴み。そのまま、天井目掛けてウルトラスロウ。驚異的な肩から繰り出されたレーザービームは、射出したペンギンを激烈華麗にバウンドさせ、扉の向こうにいる共犯者を強襲する! 「「ふぎゃあ!?」」 「今だ!」  扉越しに犯人達を激突させた手応えを感じた私は、瞬時に必殺技のモーションに入った。狭い室内での跳ね返りを乗せた全力のケンカキック! 「雪ちゃんキィーック!!!」  それを受けた扉は短い悲鳴を上げ、その場にひしゃげた蝶番と鍵を残して吹き飛んだ。視線の先で、扉だった板は壁に叩き付けられる。延長線上に在った奴等も、残らず綺麗にサンドイッチという寸法だ。 「ふぅ……我ながら改心のキック☆」  かいてもいない汗を拭う振りをし、あざとく可愛く決めポーズ。キメッ☆
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