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「「きゅう……!」」
そんな視界の中、ズシンと倒れる扉。サンドイッチした具材が露になった。予想通り、綺麗に伸びている。
「んぁ? もふもふ?」
茶髪のショートカットが特徴的である背の低いボーイッシュな女の子と、もふもふした物体。予想と違う光景に、私はもふもふを凝視した。黄金色のつやつや毛並、垂れ下がるふわっふわの尻尾、そして、可愛らしい大きな耳。
「狐……の、ぬいぐるみ?」
ちょっとだけ近寄って、もう一度良く見てみる。うん、間違いなくネコ目イヌ科のキツネさん。何故、こんな所に?
「そ、そいつの名はテン=パーランス……魔闘少女、ヘルフラワーのパートナー……今伸びてる、この女の子の事さ……」
私の疑問を待っていたかのように、女の子の下から這い出てきたボロボロのコガタペンギン。その身に受けた衝撃の凄さを物語る様に、その片翼は取れかけている。
「うわ、生きてた」
「ふ、ふふっ……むっちゃくちゃ痛かったけどね……」
フラフラと立ち上がるコガタペンギンは、身近な壁にもたれ掛かり、取れかけの片翼を押さえてニヒルな笑み―正直似合わない―を浮かべた。
「正直、驚いてる。まさかマジカルーキーである君が、不意打ちとはいえ序列五位のヘルフラワーを一撃で倒してしまうなんてね……」
「え? それ凄いの?」
「……凄い所の騒ぎじゃない。いわば君は、始めて五秒でラスボスに挑んで勝利した、レベル1の勇者さ……素質はあると思ってたけど、これ程とは」
それは凄い。私でも良く分かる。初期ステMAXのチートキャラじゃん、私。驚く私が可笑しかったのか、コガタペンギンは表情を緩めて優しげに言葉を紡いだ。
「……そういや、自己紹介がまだだったね。僕はコガタペンギンのダニエル……君は?」
「……七原雪よ、好きに呼んで。さっきは、その……疑って、怪我までさせちゃって……ごめんなさい」
命懸けの戦いを共に勝利した私達の間には、何というか、奇妙な友情が芽生えていた。
「良いよもう、気にしてないし。じゃあ、改めまして……ユッキー、僕のパートナーに、魔法少女になってくれる……? 君なら、この不毛な戦いを終わらせられる」
確かな決意が宿るその目を見詰め、私は口を開く。
「それって、時給幾ら出るんですかぁ?」
「…………えっ?」
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