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「この真っ赤な敷物(しきもの)はなんなんだ? 目立ってしょうがない。東園寺さんとタツオはこのまえ狙撃されたんだろ」  テルがぼやいた。この男のおにぎりはもう七つ目だった。どこから運んできたのだろうか、サイコが用意していたのは緋毛氈(ひもうせん)だった。日に焼けるのが嫌だといって、番傘(ばんがさ)のお化けのような日除(ひよ)けまで3本ももちこんでいる。  日陰には和洋中のご馳走(ちそう)がぎっしりと詰められた漆塗(うるしぬ)りの重箱(じゅうばこ)がならび、正月でもやってきたようだ。東園寺家の首席料理人からの差し入れで、おにぎりだけ4人の女子生徒がつくったという。サイコはこの高校の創設者の一族なので、国家の進駐官養成機関である東島(とうとう)でも、自由どころか好き放題(ほうだい)に振る舞っている。
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