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「狙撃の心配はほぼない。ここはどの射撃ポイントからも300メートルは離れている。今日はかなり風もあるし、まず精密射撃は不可能です」
そういったのは、ショートカットの少年のように背の高い女生徒だった。サイコがいう。
「亜紀(あき)がそういうなら、間違いないよ。彼女は狙撃術に関しては学年一だから。つぎのオリンピックの日乃元(ひのもと)代表候補なんだよ。100メートル離れた東島のバッジだって撃ち抜くもん」
養成高校のバッジは直径2センチ弱で、国花・橘(たちばな)が七宝細工(しっぽうざいく)で浮かびあがっている。その場にいる8人の制服の襟(えり)には、橘が光っていた。アキは平然とサイコの言葉を聞き流した。そのとおりの実力なのだろう。この高校には人並みの生徒はひとりもいないのだ。飛び抜けて成績優秀なだけでなく、誰もがなんらかの特技をもっていた。サイコはともかく、残るふたりの女生徒はなにが得意なのだろうか。クニがおにぎりを割って叫んだ。
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