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「ぼくはこのフルーツおにぎり、先入観をもたなければ、とてもおいしいと思うな。このごはん、ワインビネガーだけでなくなにかいれてるでしょう。くどくないけど、ほのかなで上品な甘さを感じるよ」  ぱっと表情を明るくしてマルミがいった。 「わかりますか、さすが菱川(ひしかわ)さん。フルーツ缶のシロップを煮詰めて、蜂蜜(はちみつ)とブランデーを足(た)してあるんです。それを隠し味に炊(た)き立てのごはんにいれると、香りがすごくよくなるんです」  クニがジョージを見てから、もう一度干し柿のおにぎりにチャレンジした。 「そういわれてみると、どこか爽やかな甘さがあるような、ないような」  サイコの頭上にちいさな雨雲が発生した。サイコは幼い頃から、自分以外の女子がほめられるといきなり不機嫌になり、雷(かみなり)を落とす癖(くせ)がある。タツオは機先を制していった。
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