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「サイコのおにぎりもおいしいよ」
サイコがつくるおにぎりは、おおきくて硬く、海苔(のり)が二重三重に巻いてあり、必ず母親お手製の梅干しがはいっていた。タツオは習慣で、一番おおきなおにぎりを選んで、最初にたべている。サイコの雷はライフル銃の狙撃より恐ろしかった。
「なぐさめなんていらない。どうせ、わたしのはいつもつまらない梅干しですよ」
テルともうひとりの女生徒が、アルミホイルで巻いたサイコのおにぎりに手を伸ばした。手と手がふれて、顔を見あわせる。両者とも双子のようによく似たごつい体型と顔立ちをしていた。クニがはやした。
「なにげないふれあいから、新しい恋が生まれたりしてな。ふたりともお似あいだぞ」
テルは片手でおおきなおにぎりをつかみ、残る手でクニの背中を平手打ちした。交通事故でも起きたような衝撃音が響く。きっとクニの背中にはモミジのように赤い跡(あと)ができていることだろう。
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