寒椿~忍ぶ恋~

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征鷹様が心休まらない気持ちが分かる。 「おーい!征鷹、私とお前が白無垢で祝言あげるぞ」 奥からドカドカと音を立てて征鷹様がやってきた。 「何バカな事云ってんだ!アンタは!」 「いや、疾風が私も白無垢が似合うと言うておるのでな」 「バカか!お世辞ってことに気がつかんか」 「私はお前の白無垢姿がみたいぞ。・・・で疾風も私が似合うと言うので着てみるかと」 「とことんバカじゃねぇの?椿!てめぇ」 「征鷹様・・・殿にそのような」 「もう主従じゃねぇの、このバカ椿につきあってらんねぇ」 「そうか?お前の躰が離れられぬと思ったが」 しれっと艶っぽい事を云う。征鷹様の悪態が止った・・・頬を赤らめておられる。 「・・・んなこと・・・ねぇ・・・離れられる」 真っ赤な顔のまま部屋を出ていかれ、闇に消えていった。 「いつもあのようにつれぬ事ばかり言うが・・・可愛くてならぬ、なぁ疾風」 見透かしたような眼でこちらを見て殿が言った。 殿は私が征鷹様を想うているのを承知していらっしゃるのか? なら・・・なぜ、私をお傍に置いているのか?すこし腹が立ってきた。 兄者の事もすっかり飛んで、初めて殿に無礼な物言いをした。 「殿は私が征鷹様を好いているのを承知でお傍に置かれているのですか?いま、あの方を私が襲うかもしれないのですよ」 「そうかもしれんなぁ・・・但し、奴の躰、私しか受け入れんぞ」 なんたる自信・・・殿はやはり一つも二つも上の方だと思い知らされる。 「では、兄が殿をお慕いしているのも知っておいでですか!」 「疾風っ!」 「壱風・・・そうなのか?」 「いえ・・・そのような・・・」 兄は黙り込んだ。殿はゆっくりと私達二人を見据えてこう言った。 「疾風・・・お前勘違いしておるぞ。自分で考えてみよ。祝言は行う。お前たちは紋付きがいいか?白無垢が良いか?」 「殿・・・」 呆れてものが言えなかった。でも勘違いとはどういうことだ? 殿さまの意味ありげな言葉に頭を悩ませていた。
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