ズッキューン!

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ズッキューーーーーン! マンガだったら、背景にこんな音が入ると思う。 ううん、絶対入ってる! 6月のジメジメとした天気なのに、その人の周りだけ爽やかな5月の風が吹いてるんじゃないかと思った。 「島ちゃん、島ちゃん」 目は外にくぎ付けのまま、机で弁当を広げて食べている親友、島村真知子の名前を呼んだ。 「ん?」 「あの人、誰?」 2階の私たちの教室から見える渡り廊下を歩いてる生徒をぶしつけに指差す。 どうせ見えないしいいよね。 「誰?・・・あーーーー、特別組の四谷汐じゃん」 「島ちゃん知ってる人!?」 「知ってる人?って、知らない人居ないんじゃない?あ、ゴメン。アンタ知らなかったね」 ヨツヤウシオ・・・君。 「特別組って事は頭いいって事だよね」 「まぁね。ってホントに知らないの?アンナ有名人」 「有名なの!」 「あんた、学校生活何してたの?」 「普通に過ごしてましたけど」 「いやいや、普通に過ごしてたら四谷汐の存在気付くでしょ。 去年の体育祭とか」 「熱出して休んだ」 「文化祭とか」 「法事で休んだ」 「アンタ・・・ついてないね」 「それよりも、教えてヨツヤウシオ君について」 「教えてって言われても、特別組だし噂話程度にしか知らないけど・・・何で急に興味持ったの?」 「運命だと思う!」 「は?」 「運命の相手!見た瞬間、胸がズキューーーンって言った!」 私の言葉を聞いて、ハァーーーーと盛大なため息を吐き出す島ちゃん。 「よく聞け、妹尾郁子。 彼は、うちの学校でも超が付くほどのイケメンで頭が良くてうちらと生きてる次元が違うの。 どう足掻いたって、知り合いになることすら不可能な相手なのよ。 運命とか高校二年にもなってふざけた事言ってないで、現実をしっかり見る! ハイ!この話オッワリー。ご飯食べよ」 ううううう。 だって、ズッキューーンって言ったもん! 運命の相手だもん。 渡り廊下の屋根で姿が見えなくなったけれど、彼が居た場所をじっと見る。
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