序章

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   折原 幻幽斎は、闇の中にいた。  妖を滅する事を生業とした折原家の一族。その党首であった彼は、三百年前に大妖なる悪しき妖を封じた。  我が身を、呪符と同化させる事によって。  幻幽斎は、永久の時を大妖と共に過ごすつもりでいた。  世に存在する万物に永遠の時など存在しない。その事は、幻幽斎も分かっていながら、そうなるべく努力はしていた。  その身を、呪符と化して尚。  それは、大妖を世に放たぬ為である。  ここは、妖界。  人が暮らすのを人間界とするならば、妖の暮らす世界は妖界と称されるだろう。  その昔、妖界で絶大なる力を有した大妖。その強大な妖気は、人間界にも影響を及ぼすようになる。  その為、幻幽斎が討伐にやってきた。  ところが、大妖を滅する事が叶わぬ事を悟った彼は、大妖を岩山の山頂にある社に封じる事にした。  それから、三百年もの時が流れる。  時の流れは封印の効力を弱め、内に封じた大妖の妖気を増大させた。
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