序章

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   解放の時は近い。  それを察した幻幽斎は、最後の抵抗を試みる。しかし、日に日に増していく妖気を抑えきれなくなる。 「あとは、我が子孫に託すしかあるまい」  この数ヶ月、幻幽斎は折原一族の使命を託す者の力を見極めていた。  最初は、ただ頼りない存在であった。  三百年の時は、一族の伝承にも影響する程の長さを持つ。  故に、その使命も妖を滅する力も技も廃れていた。  それでも、子孫は使命に目覚め妖界へとやって来た。  少年は、己の持てる力の全てを用い、大妖から差し向けられた妖との戦いをくぐり抜け倒していく。  戦いの中、身に付けて行く強さと技。  自分とは違う、異質の力。  だがそれこそが、大妖を討ち倒す力となろう。  幻幽斎は、結界の力が極限まで弱くなり、大妖の妖気を完全に抑えきれなくなった時、そう実感した。  まだ、心許ない部分はある。  大妖は、幻幽斎が封じた時よりも、格段に強くなっているのも事実。
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