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リートルード国王が正妃を迎えて数日。
王の側近ユーディーン・アラン・バートレットは、王城内にある自室にて一息ついていた。
ぐったりと体を椅子にあずけ、ふうと息を吐きだす。
よく見ると薄らと目の下に隈をこさえていた。
何しろ、国王の結婚式という一世一代のイベントを取り仕切り、無事に成功させた後なのである。
来賓の手配に、会場の準備にと忙殺されたユインはろくに睡眠時間が取れず、疲れ切っていた。
とうとう見かねた主から『休め』と命令され、本日は一日休日となっている。
睡眠は十分に取れたがこの後は何をして過ごそうか、とユインはぼんやり思った。
――思えば、休暇を取るのは随分と久しぶりだ。それと王の傍から離れてひとりでいるのも。
ユインは思い返す。
幼い頃から王―当時はまだ王太子だったが―に付き添い、共に遊び、学び、成長してきた。
歳が近いのもあって、ヴィルフリートとはよく気があった。
あの頃の彼は、いわゆる悪ガキだった。
誰の言うことも聞かず、自分勝手にふるまう暴君。
自分も、彼と一緒になってひどい悪戯に加担したり、家出に付き合ったりもしたこともあったか。
――そんな彼も、今や立派な一国の王。
最愛の女性と結婚し、今後ますますの繁栄が望めることだろう。
しかし、
「………。」
ユインは渋面を作った。
むくりと体を起こし、窓の外を眺める。
視線の先はすでに打ち壊されてなくなった、後宮跡。
ユインは、未だに正妃となった少女を計りかねていた。
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