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「……嘘だろ……?」
明らかに室内の天井を越えた高さまで飛んだ。
ちなみに、この部屋(?)は1階だ。上には2階も3階もある。
「……とりあえず、出るか」
言って、咎菜は後ろにあるバラバラになった扉の方を向く。
背後に目的の女狐がいた。
「なっ……!?」
「ハローハロー。久し振りね、と――」
「今は本名を名乗らないことにしてるんです」
本名で呼ぼうとした女狐の言葉を遮る。咎菜の目からは驚愕は消え、代わりに敵意が宿っていた。
黄緑の瞳が鋭く光る。
「今は『咎菜慎理』って名前を使ってます」
デスサイスの刃を女狐の喉元に向ける。女狐は全く動じてない。
「行きますよ、女狐が……」
シラカワ ゲンオウ
「私の名前は、白河 玄翁。女狐なんて呼ばれる筋合いねえよ忘れるな、ガキ」
白河玄翁。
それが今の――現世の彼女の名前だった。転生を当たり前のように繰り返す天狐にとって死と生は、特に悲しくも嬉しくもなかった。
「今まで何度も勝ちを譲ってあげてたけど――私と君とにはハッキリとした優劣の差があるのよ」
デスサイスが生み出す斬撃の暴風をいとも容易く掻い潜る。
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