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スタート、と白河が言う前に、彼女の持っていた唐笠は咎菜の喉に目掛けて突き出していた。
(やっぱり信用ならねえ……!)
反射的に上半身は後ろへ下がる。凶器と化した唐笠を逃れるために重心も後ろへ――
「あは♪」
それは勿論、白河の予想通り――いや、例え戦闘の素人にだって予測出来るかもしれない。
そう、これはそれほど単純な結果だった。
後ろへ下がろうとする咎菜の背後――正確には、心臓の位置に、刃物のように先端を尖らせた金色の狐の尻尾が固定されていた。
咎菜も馬鹿ではない。白河玄翁に対する作戦やらあったのかもしれない。だが、彼が生き物である以上、『反射』には逆らえない。こればっかりはどうしようもなかった。
(私の買い被りだったかな……)
白河が勝利を確信して、咎菜に背中に向けた、その時だった。
「――――っ!!」
声にならない咆哮を聞いた。方向は真後ろ。咎菜慎理がいる位置だ。
「まさか……!」
気付いた時には既に遅く、圧倒的な力が――
妖怪の中には特殊な力を発動出来る者がいて、しかし、それは条件さえ満たせば、どれだけ弱小な種類の妖怪であっても使うことが可能というものだった。
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