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白河玄翁という『天狐』の話をしよう。
彼女にとって、生と死ほど身近な存在は無かった。
天狐――妖狐の中で最も位の高い存在。転生を繰り返す度に力を増す妖狐がいずれ到達する高み。
しかし、逆に彼女の精神は徐々に磨り減って弱っていくばかりだった。
今の白河玄翁の禍々しい性格を形成したのも、これが原因かもしれない。
今までの平均寿命18歳くらいだった白河が現在、19歳になったことは珍しいことだった。
今までは時代のせいもあり、18歳になる前に死ぬ(主に病死、他殺など。戦争に巻き込まれて死んだこともあった)、それはたとえ凄い妖怪だろうと、年頃の女の子の心を抉るのには十分だった。
結果、白河玄翁は歪んだ。人の不幸を見て嘲笑えるくらいにはグニャグニャに歪みきっていた。
平和な時代になった今では、何とか平均寿命だった18歳を越えることが出来た。病死も、そうそう殺される心配も無いし、きっと30前半までは生きられるだろうというのが、自分なりの見解だった。
そして、この平和な時代で、前世以来初めて興味を持った奴に出会えた。
咎菜慎理だ。
きっとこいつも今までの奴と同じだろう、と最初は白河も思っていた。
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