怖気森 不思議(オゾケノモリ フシギ)

2/16
前へ
/71ページ
次へ
 最悪な現在を生み出すのは、いつだって最悪な過去からだけである。  いつだったか彼女が言ったことだ。悪いことはいつまで経っても続くものだ。彼女はそれを嫌と言う程思い知らされている。  オゾケノモリ フシギ  怖気森 不思議。  この名前も、自分で付けた記号のようなものでしかないし、女子高生という社会的立場も、ただ生きやすいから、という理由からでしかない。所詮は自分のためだ。  ユキハラ フユゾラ  雪原 冬空を助けたあの時も、迂闊に人間に恋をしたあの時も。結局は彼女の我儘だった。  だからこそ、彼女は振り返る。同じ過ちを繰り返さないために。  イヌガミギョウブダヌキ  犬神刑部狸。  妖怪の名前なのだが、まぁ、知ってる人はそれほど多くはないだろう。  ざっくり説明すると、四国の化け狸の親玉のようなもので、神通力に長けている。  家族と言えるものはいない。天涯孤独というものだ。  そんな彼女が私立四季上学園の生徒会長になるまでは、普通の小学校、中学校を通ってきた。勿論、バックアップをしてくれる存在もいた。  類は友を呼ぶ――という訳ではないが、妖怪は妖怪を呼ぶのか、彼女の保護者もまた、妖怪だった。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加