怖気森 不思議(オゾケノモリ フシギ)

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 テンコ  天狐――妖狐の最上格ともいえる存在。転生を繰り返したあいつにとって、いくら外見が若くても年齢などあってないようなものだ。  「いつまでも周りに心を心を開かなくちゃあ、人生楽しくないでしょ?」  見た目は怖気森とほぼ同じ歳のくせに貫禄のある声で言った。怖気森はいつも、それが見下されているようで気に食わなかった。  「私達は人間じゃないでしょ」  吐き捨てるように言うも、そいつはまるで子供をあやすように(事実、子供だったが)、言うのだった。  「恋も出来ないしね」  「……あまり、おちょくるなよ、いくら保護者っつっても殺すぞ」  「やってみな。昔、私の友達がそんなこと言ってたけど、結局、返り討ちだったわよ。それをあんたなんかが殺れると言うんなら、殺って見せて」  どれだけ恨み買ってんだよ、と怖気森は思ったが、口には出さない。  結局、今住んでいる家も、食べている物も、通っている学校も、(どうやってか)目の前の狐女の計らいなのだ。  下手に機嫌を損ねて、バックアップを打ち切られてもつまらない。もしかしたら、殺されるかもしれない。  (まぁ――大丈夫でしょ……)  心の中で怖気森は呟いた。
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