怖気森 不思議(オゾケノモリ フシギ)

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 目の前の女狐は性格が悪い。最悪なレベルに。  だが、だからこそ――キレたらバックアップを打ち切る程度では済まさないだろう。ありとあらゆる手段を用いて、怖気森の精神を破壊にかかるはずだ。  もうその程度まで彼女の言動や思想は把握した。  だからこそ――  「あんたが敵じゃなくて本当に良かったわ……」  怖気森は心の底からそう思うのだった。  カサイド  ツユ  傘井戸 梅雨が怖気森と戦っている裏で――とある廃屋では別の戦いが始まろうとしていた。  彼は現在、他人に本名を明かすことを良しとしていない。  だから、時に師匠の名前を借りることもあれば、相手に好きに呼ばせているようにしたり、平気で偽名を名乗ったりしている。  今回の彼の名前も偽名だった。  トガナ シンリ  咎菜 慎理。  本名のいくらかを使った。今までの偽名の中では一番本名に近い。  17歳の咎菜だが、顔付きは幼く、青い眼鏡に、青いハンチングを身に付けている。  髪は真っ白になっていて、瞳の色は、エメラルドのような黄緑だった。  咎菜は半分人間だが、半分は妖怪――半妖と呼ばれる存在だ。  片手には大きな鎌を背負っている。
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