怖気森 不思議(オゾケノモリ フシギ)

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 「……場所は、東北の――」  そうして、咎菜と灰道は教えられた場所に来ていた。  東北地方の某県某市の廃屋。  震災の影響が大きい東北だが、山に囲まれたためそれほど酷いことにはなっていなかった。  (破損は元からか……)  元々は一体何をしていたのかは知らないが、多分、研究施設か何かだろう。埃にまみれた床の所々にビーカーや試験管の破片が落ちている。  「何でまたこんな廃虚にいるんだあの人は……」  口元を袖で押さえながら咎菜が言う。  まだ午後の4時なのに、中は夜中のように暗かった。咎菜は目を細めて廊下の先を見つめる。面倒なことを……と、若干の苛立ちから歯ぎしりをする。  そして、呟いた。  「あの女狐が……」  一方その頃、件の女狐は――  「二手に分かれたのかな?」  ケタケタと愉快そうに笑っていた。  時代錯誤も甚だしい高価な着物に身を包み、片手には深紅の唐笠。大和撫子を連想させる格好だが、金髪のストレートヘアーがそれを台無しにしていた。それでも可愛らしい顔立ちなので、クラスにいれば確実にマドンナの立ち位置なのだろうが。  金髪の頭からは狐の耳が生え、何者かの気配を察知しているのか、時々ピクピク動く。
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