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耳の動きがどんどん大きくなっていく。
そして、突然――
ギギャァッ!!
金属同士が擦れる不快な音が部屋全体に響き渡った。
咎菜慎理は正直帰りたくなっていた。
暗い所は苦手ではないが、一人でいると、気が滅入りそうだった。死神などの妖怪がいる以上、特番なんかでやる廃虚に出る幽霊なんかも多分本物なんだろうなぁ、なんて考えたら尚更だ。
面倒事には極力関わらない。それが彼のスタンスだ。
「師匠は実際、いてもいなくても変わらないしな……」
「それは本人の前で言うことじゃないわよね……」
「替わってくださいよ……大体何であの人ここにいるんですか……? ここ面白くも何とも無いですよ」
「廃虚マニアって、こんなのの一体何が楽しいのかしらね?」
適当な返事だ。もしかしたら、灰道ももい帰りたいのかもしれない。
既に3分は過ぎている。カップ麺はきっとスープを吸い尽くしているだろう。
「……はぁ。何が悲しくてこんな薄気味悪い廃虚を彷徨かなきゃならないんですかね……」
嘆いても仕方が無い。今はとにかく、目的を達成して、早く外気を浴びたかった。
目の前にどれだけ分厚そうな鉄の扉があろうと関係無い。
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